【祝い飯2】西日本限定?ご当地ハレ食の鯛そうめん

鯛そうめんを食べた事はありますか?

前回、ご当地のハレ食を調査していて気になったのが「鯛そうめん」。
そうめんの上にまるごと鯛が乗った大皿は見栄えもよくまさにハレ食というものでした。
ただ、私は鯛そうめんを食べたことがなかったので「こんなハレ食があるのか。すごいな」と思っていました。
その後、地元徳島のハレ食を検索していると「島そうめん」なるものが、、
あれ?これって鯛そうめんでは?
親に「鯛そうめん」のことを聞いてみると、「一度作ったことあるよ。覚えてないの?」とのこと。
覚えてませんでした。すみません。反省。

最初は、もしかすると鯛そうめんは近年の町おこしの一環で誕生したグルメなのではと思っていましたが、どうやら昔からあるようです。ざっと調べた結果、郷土料理として「鯛そうめん」(ないし類似の料理)を紹介していたのは7県ほどあり、西日本に集中しているようでした。
はたして鯛そうめんの起源は何県なのか、そもそも東日本には鯛そうめんは伝わっていないのか?

今回は鯛そうめんに関するお話です。

鯛そうめんの起源は瀬戸内海沿岸港街の婚礼料理

鯛そうめんの起源には諸説あるようですが、基本的には瀬戸内の港町などで婚礼や披露宴の際に「祝い鯛」として出され、その後、身をほぐしてそうめんに入れて食べていたのが最初のようです。見栄えがよいという理由で、その後、そうめんの上に鯛の姿焼きや姿煮を乗せるスタイルに変化していくのも自然の流れと思われます。色鮮やかな五色そうめんを用いた愛媛の「鯛そうめん」などがその代表例です。

また、大分に伝わる「鯛麺」は、うどんの上に鯛を乗せるスタイルのようです。うどんもそうめんも縁起物には変わりがないので、その他の地域でもうどんとそうめんの両方のパターンがあったと考えられます。(当時の披露宴は街ぐるみで集まって準備していたことを考えると、うどんバージョンが最初だったのではと想像できます。)

この「婚礼料理の鯛そうめん」がやがて話題になり、熊本や滋賀など、瀬戸内から離れた場所にも伝わったのではないかと考えられます。

ちなみに、江戸時代の書物には「鯛麺」という言葉が登場していることから江戸時代に流行ったという説が主流のようですが、室町時代にはすでに現在の形のうどんやそうめんが冠婚葬祭などで作られていたため、江戸時代より前にすでに鯛そうめん(鯛麺)があった可能性も十分に考えられます。

瀬戸内から広がり、東北までは伝わらなかったのか?

鯛そうめんが瀬戸内起源だとして、東北の方までは伝わらなかったのかという部分が気になります。ざっと調べたところ、瀬戸内以外では滋賀県長浜市日野の郷土料理で「鯛そうめん」があり、日野祭やハレ食で振る舞われていたようです。他には同じ滋賀県の「焼き鯖そうめん」や三重県の「煮魚そうめん」が類似の料理がありましたが、どちらかといえばハレ食というよりはケ食(日常食)の郷土料理のようなので別ルートであると考えられます。

以上のように、瀬戸内以外では熊本県と滋賀県の一部にしか伝わっていなかったようで、瀬戸内から人気が出て全国に広がったという流れではないような感じでした。

ではなぜ熊本、滋賀だけに広がったのでしょうか。瀬戸内、滋賀や熊本の共通点を考えてみると、「あ、もしかして」と仮説が思い浮かびました。

【仮説】鯛そうめんはひょっとして平家の末裔のハレ食では?

結局、人気があれば東に広がるはずの鯛そうめんがそんなに広がることはなく、瀬戸内、滋賀、熊本、、という分布は平家の隠れ里が点在する地域でもあります。

当時頼朝に攻められた平家は西へ西へと後退し、最期は壇ノ浦の戦いで散ることとなりましたが、平家とバレないように苗字の漢字を少し変えて住み着いたという話が滋賀県にも、熊本にもあります。そう考えると、落ち延びた後の鎌倉時代や室町時代にも平家同士でこっそり交流があったとすれば、限定的に「鯛そうめん」が伝わったのも納得できます。

仮に江戸時代になってから鯛そうめんが広がったというのであれば、東海道を通じで江戸まで行くなど、もっと全国的に広がっていたはずです。おそらくまだ源氏の勢力が強かった頃に、瀬戸内の平家の隠れ里で誕生した婚礼料理が同じ平家の末裔がいる地域に伝わったというのがしっくりくる流れのような気がします。
(もちろんあくまで仮説です。最初はもしかして平清盛が鯛そうめんを食べていたとも想像しましたが、当時はまだ今の形の素麺やうどんはなかったので、、残念!)

何はともあれ、今度のハレの日は鯛そうめんで祝いましょう!

徒然書きましたが、結論は以下だけす。

「今度のハレの日は鯛そうめんで祝いましょう!」

五色そうめん、鯛をスーパーで調達すれば、見事な鯛そうめんを作ることができるはず。

ハレの日の鯛そうめん。
ぜひお試しあれ。

以上となります。
鯛そうめんは居酒屋大皿料理としても人気がでそうなので全国区になるのは遠くなさそうです。
もしくはパスタの上に、、鯛のアクアパッツァの下にパスタを敷き詰める、、というようなメニューが登場しそうな予感がします。