基本はデミカツ!?少しずつ違うご当地カツライス

ご当地で少しずつ変化するカツライス(かつめし)

私が始めてカツライスを食べたのは大学の学食でした。
日替わりランチで「月見カツライス」という日があり、頼んでみるとなかなかのボリュームで感激。初めて食べたことを学食のおばちゃんに伝えたら「カツライスは加古川名物よ」と言われたのを覚えています。
その後、社会人になり機会があって加古川に行くと「加古川名物かつめし」の看板やのぼりがちらほら。懐かしくなり店に入ってみると、、
「あれ?学生の時に食べたカツライスと違うな」という印象。
「加古川かつめし」は白ご飯の上にトンカツ、そしてデミグラスソースという感じなのですが、私が学生時代に食べていたカツライスはチキンライス(ケチャップライス)の上にデミカツ、そして目玉焼きというプレートだったのです。
その後、ボルガライスを食べる機会があり、オムライスの上にトンカツ、デミグラスソースで「ああ、これはカツライスだな」と思ったのを覚えています。

今回はご当地カツライスの歴史を調べて、どのようにカツライスが全国に広がり、変化していったのかを考察してみます。

名前で分類、ご当地カツライス 7選

「ご飯にデミカツを乗せる」というスタイルのカツライスを調べてみると、昭和初期にカツライスがメニューとしてあった地域は多くあり、やがてメニューから消えて行き、残ったところがご当地カツライスとして名物になっていることがわかります。
今回は現在もあるメニューのうち「ご飯にデミカツを乗せるスタイル」のものを7選あげます。

1.カツライス

カツライスとは基本的には「白米の上にトンカツを乗せてデミグラスソースをかけたワンプレート料理」です。

現在でもカツライスがそのままメニュー名として残っている地域としては、大阪、兵庫、愛媛、島根の4県が有名で、地域に根付いたご当地グルメとなっています。
なお、基本はトンカツですが、代わりにビフテキを用いたメニューや、デミグラスソースではなくケチャップソース、カレーソースなど独自性を出している店もあるようです。
※発祥は昭和6年頃に大阪の洋食店で誕生し、その後全国的に広がったとされています。

2.かつめし

加古川ではカツライスのことを「かつめし」と呼んでいます。
「白米の上にビフカツ(もしくはトンカツ)を乗せてデミグラスソースをかけたワンプレート料理」という点はカツライスと同じで、見た目も含めて、カツライスと同じ料理と言ってよさそうです。
※発祥は昭和22年頃に加古川駅前の食堂で食器が足りなかったのでビフカツとご飯をワンプレートにしたのがきっかけとされているようです。

※【異説】かつめしが元祖では?
「かつめしとカツライス」の関係は「明石焼きとラヂオ焼き」、「にくてんと洋食焼き」などの関係と同じニュアンスを感じるので、個人的には「かつめし」の方が元祖なのではと感じています。
もちろん異説です!
明治、大正あたりにすでに「かつめし」があったなら・・、、という歴史的発見があることを期待します。
(当時の慶應大や明治大の学食とかで「かつめし」とかありそう・・)

ハヤシライスやデミグラスソース、ビーフカツ、カツ丼は明治時代にはすでにあったようなので、普通に考えると「かつめし」に類するものは既に明治時代に誕生していそう。
最初はビフカツのかつめしを見た大阪の洋食店が「じゃあトンカツで、こっちの名前は、、カツライスや!負けへんで!」という感じで誕生したような気がしてなりません。

少なくてもカツカレーが流行った時点で、ハヤシカツライスはあったはず・・知らんけど。

3.デミカツ丼

岡山のご当地グルメとして有名な「デミカツ丼」。「白ごはんにトンカツを乗せてデミグラスソースをかけた丼」というスタイルなのでプレートではないですが、ほぼカツライスと同じです。
発祥は岡山のトンカツ屋で昭和6年に誕生したとされています。
(カツライスも昭和6年誕生、、同じですね)

4.トルコライス

長崎のご当地グルメとして有名なトルコライスですが、こちらも「ご飯の上にトンカツ、デミグラスソース」という点でカツライスとの類似性が感じられます。
※発祥は昭和30年代とされているので、すでに全国に広がっていたカツライスの影響は多少なりともあったと考えるのが自然です。「カツライスと差別化するためにご飯をピラフにして、ナポリタンもつけようぜ、、名前はピラフがトルコ風ライスなのでトルコライスでいいよね」って感じなのではと想像しちゃいます。
このトルコライスをメニューに加えたお店は各地にあり、店によってピラフがバターライス、ケチャップライスのパターンや、トンカツをチキンカツに変えたバージョンなど独自のトルコライスが誕生しているようです。

5.ボルガライス

福井のご当地グルメとして有名な「ボルガライス」。「オムライスの上にトンカツを乗せて特製ソースをかける」というスタイルで、基本的には店それぞれの特製ソースをかけるようですが、デミグラスソースのお店もあるようです。
ちなみに大阪や京都の洋食店によっては「トルコライス」といえばオムライスにトンカツを乗せてデミグラスソースとされていて、ボルガライスと同じような感じです。
(いわゆる長崎のトルコライスを出す店もあり、店による感じですね・・)

6.エスカロップ

北海道根室市のご当地グルメの「エスカロップ」。「バターライスの上にトンカツ、デミグラスソースかけ」という感じでカツライスやトルコライスと類似性が感じられます。
発祥は昭和38年頃で、名前の由来はイタリア語のエスカロープ(肉の薄切り)からきているとのこと。
根室ではバターライスの「白エスカ」とケチャップライスの「赤エスカ」の2種類あるようです。
誕生時期を考えるとカツライスやトルコライスの影響もあったと考えるのが自然です。

7.ハントンライス➕その他

金沢名物のハントンライス。「オムライスに海老フライや白身魚のフライを乗せてタルタルソースとケチャップをかけたもの」という感じで、ちょっとカツライスとは違いますが、ボルガライスにはシンパシーを感じるメニューです。
また佐賀のシシリアンライスや、根室のオリエンタルライスなど、洋食屋が日本各地に出来始めた頃は◯◯ライスというネーミングが流行っていたのではないかと思われます。

そもそもハヤシカツライスっていつできたんでしょうか?

ちょっと気になるのはカツライスやトルコライスが誕生した時期が昭和になってからという点です。
そもそもデミグラスソースや、ビフカツ、トンカツ、ハヤシライス、カレーなどは明治時代にすでに誕生しており、カツカレーについても記録にある一番古いお店では大正7年に誕生とのことです。
その辺のことを踏まえると、どうしても以下の想像をしてしまいます。

「カツライスに類するものは明治には既にあったんじゃないかな」

ただそんなに流行らなかったというか、「まあ、うまいね。カツカレーのハヤシ版だね」という感じで爆発的に広がることはなく、やがて自然淘汰されてしまって、、昭和になり「カツライス」として再登場。その後「かつめし」や「トルコライス」として改良されていくという感じのような気がします。

それはデミグラスソースやハヤシライスの現在のポジションを考えると想像しやすいです。
もちろんハヤシライスも美味しいですが、結局よく食べるのは「カレー」です。「カツカレー」はメジャーですが、「ハヤシカツライス(カツハヤシライス?)」はマイナーと言わざるを得ない状況といえます。

おそらく明治後期から大正にかけて地方にまで洋食が広がった時期にカレーやトンカツ、コロッケ、オムライス、親子丼、カツ丼など、一気に食の選択が増えた中でカツライスは一番人気というわけではなかったということでしょう。
そして、デミグラスソースを使った一番手はやはりハンバーグ。おそらくハンバーグ丼ならぬバーグライス的なネーミングのメニューを出した洋食店もあったことでしょう。まあでもカツライスと同様にワンプレートにする必要性がなかったのかもしれません。

またカツカレーが流行り出した時にいくつかの洋食屋では新メニューとして「ハヤシカツライス」を出したはずです。それは公式に「カツライス」が登場するもっと前のはずです。
ただし「ハヤシカツライス」はそこまで流行ることはなく、カツライスも同様だったのです。
そのカツライスに一手間加えて、ご当地で人気メニューとなったのがトルコライスやボルガライス。
そう考えるのが妥当な流れのような気がします。

以上となります。
ここまで読んでくれた方は近いうちにデミグラスソースがたっぷりかかったカツライスを食べることになるはず!!
それは白ごはんか、ケチャップライスか、、休日におうちで「カツライス」というのもいいかもしれません。どっちかというと、、ボルガライスかな。。

P.S.デミグラスソースを使った次のメニューは「デミたこ」とかどうでしょうか?